7月 「手漕ぎボートの時間」
梅雨も明け、連日の夏日となるキャンパスには、夏の訪れを告げるセミの声が響いています。今回は立花先生が学生時代の「夢中」について紹介くださいます。
昭和から平成の時代にかけ西宮市内の五ヶ池(甲山の北側に位置する池)には貸しボート小屋があり、ハイキングを楽しむ人々や家族連れ、デート中の恋人たちで賑わっていました。
私が関西学院大学の学生時代、授業が休講になったり、時間割に空きコマがあったりした際は、親友と二人で甲山森林公園を走り抜け、五ヶ池に向かっていました。それは、陸上競技の長距離練習のためというより、ひたすら貸しボート(当時 500 円/60 分)を漕ぐためでした。90 分の空きコマのうち、60 分ボートを漕ぐために、関西学院大学から上ヶ原浄水場前を通り、甲山森林公園を抜け、五ヶ池まで 15 分以内で駆け上がり、ボート練習が終われば 15 分以内に上ヶ原キャンパスの教室までダッシュで戻りました。実は、学校法人関西学院が所有する無人島・青島(岡山県瀬戸内市牛窓町の沖に位置する)で、毎年夏休みに関西学院中学部が中学 2 年生を対象として実施している名物キャンプの学生リーダーを 4 年間させて頂いていました。キャンプ中には、遠泳やカッター体験などのプログラムがあり、中学生が遊泳中に体調を崩したり、予期せぬ事態によって溺れそうになったりした際に、小型の手漕ぎボート(通称“黄ボート”)で直ちに救助に向かうためでした。それだけでなく、大量発生することもあるクラゲを網で除去するなどの技術も必要だったからでした。五ヶ池へ行っていた目的は、ボートを高速で漕ぎ、自在に旋回させる技術を磨く必要性を感じていたためでした。幸いなことに、キャンプリーダーをしていた 4 年間で溺れた生徒は一人もいませんでした。今年も変わらず、青島には草刈りのお手伝いで行かせていただきます。しかし現在、貸しボート小屋はなくなり、五ヶ池自体への立ち入りが禁止されています。また、かつて貸しボートがあった場所(阪神「武庫川駅」横や「宝塚駅」近くの河川敷)も時代の波に飲み込まれ、残念ながら閉鎖されていきました。周囲の友人や同級生からは、いつも奇異な目で見られながらも、暑い夏の数日間の無人島キャンプで発生するかもしれない「万が一」のため、友と一緒に「貸しボート漕ぎ」に捧げたあの時間は、今も良き思い出です。ただ、時折どこかで貸しボートを見かけると、白鳥(スワン)ボートには目もくれず、思わず手漕ぎボートに乗船する悪癖は今も治りません。
(立花 直樹)