6月 「私の推し活!?」
梅雨に濡れる木々の緑がやわらかく映え、キャンパスには静かな美しさが広がっています。
今回は山内先生が留学生としてオーストリアで過ごされた時の「夢中」について紹介してくださいます。
オーストリアにあるザルツブルクで音楽漬けの留学生活を送っていた時のお話です。ザルツブルクは、かの有名な作曲家 W.A.モーツァルトが生まれた町であり、映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台にもなった町です。夏の音楽祭には、世界中から著名な音楽家やクラシック愛好家が集まるため、夏の約 2 か月間は一気に華やぎ、町全体が音楽一色となります。しかし、夏の音楽祭や春の祭典など特定の期間を除くと、オペラやバレエ、大編成のオーケストラによる演奏会はあまり上演されることがありません。そこで学生らが聴きに行くのは、決まって首都ウィーンにある国立歌劇場や楽友協会コンサートホールでした。当時、学生券や立ち見席がなんと!日本円換算で 400 円ほどでした。そのチケットを入手するには、公演当日に配布される整理券を求めて、何時間も並ばなければなりません。ザルツブルクからウィーンまでは列車で片道約 3 時間半、劇場では整理券の入手のために数時間並び、入手後は夜の開演時間まで待つのです。それでも、お目当ての公演を興奮しながら鑑賞し、鑑賞後には深夜に戻る列車のなかで友人たちと共に感動を分かち合い、意見を交わし、余韻に浸りながら家路についたものです。
専攻のピアノレッスンでは、取り組んでいる楽曲の分析はもちろんのこと、楽曲が作られた時代背景や作曲家について、あるいは言語や文化に至るまで、さまざまなことを問われました。指導教官から「この場面は〇〇オペラの〇〇の場面をイメージして」や「○○交響曲に代表される、この調は、どんなイメージ?」と、楽曲理解には膨大な知識や鑑賞が必要であることを突きつけられました。今、振り返れば、朝から晩まで音楽のことしか考えずに過ごせた夢のひと時。友人たちとまるで「推し活」のように足しげくウィーンに通っていたことを、懐かしく思い出します。
(山内信子)