10月 「自分を知るということ」
秋がいよいよ本格化してきましたね。
今回の「Teachers’ Voice」をご担当くださるのは小山先生です。
「自分」という存在を考えることについてお話いただきます。
「自分を知るということ」
あれだけ暑かった夏の日もいつの間にか過ぎ去り、すっかり季節は秋ですね。
秋は「読書の秋」とも言われますね(「食欲の・・・」のほうがいいでしょうか?)。
私は自分のことを決して読書家とは思いませんが、それでも“お気に入り”の本が幾つかあります。
その一冊が晴佐久昌英さんの『星言葉』(1997, 女子パウロ会)という本です。
もう20年以上前になりますが、私の大学時代の(今も大切な)友人が「好きな本だから、ぜひ」と言って、当時アメリカに留学をしていた私にプレゼントしてくれたことがこの一冊との出会いでした。
それ以来、『星言葉』は私の宝物になりました。そんな『星言葉』の中に、「知る」と題した短い文章があります。
その「知る」いわく、私たちは多くのことを“知ろう”として一生懸命になっているけれども、本当の意味で豊かな人生を生きるために何よりも一番知らなければならないものは、自分の外側にある事柄よりも、自分の内側にあるもの、つまり自分自身だと語っています。
保育などの対人援助と呼ばれるはたらきを実り豊かにする上での一番の基盤であり、大切な要素は自分自身という存在です。
保育者や援助者は、意識しようがしまいが、その働きの場である保育室や教室、カウンセリングルーム、さらには援助相手との関係の中に普段の自分を連れて行っており、そこに自分が映し出されているということを知っておく必要があるでしょう。
学びを通して得た知識や技術も無論大切ですが、それらは「私自身」という土台の上に積み上げられたもので、同じように学び得た知識や技術であっても、それらがどのように活かされていくかというその色付けは、人それぞれの私というフィルターを通ることによって全く違ったものになっていきます。
私自身のストレングス(強みや良さ、上手くできること)を使って私だけの私らしいオリジナルの保育、援助ができる。
それはなんと素晴らしいことでしょう!しかしその一方で、私たちは誰ひとり例外なく、それぞれに良い方向に変わっていったり、回復していったりする必要がある部分も自分自身の中に持っています。
『星言葉』の「知る」は次のように言っています。「わたしが何を恐れ、どのようにこだわり、どんな偏見をもっているか。いつ喜び、どこで怒り、なぜ悲しんでいるのか。何を欲し、誰を愛し、どこへ向かっているのか。その真実をしらなくてはならない。」と。
保育者や援助者が真に実り豊かなはたらきをするためには、自分の目の前にいる存在をしっかりと見つめる視点を持つ必要があります。
しかし同時に忘れてはならないのは、子どもやその保護者、援助の相手と向き合ったときに保育者(援助者)自身の中に何が起こっているのか。
どのような心の動きがあるのか。どのような気持ちが沸き起こってきているのかを見つめるというもう一つの視点、つまり、自分自身の内側を深く見つめ、知って成長していくことが不可欠であるということです。
「自分自身を知る」こと、それは一生を通しての気が遠くなるような作業であり旅路(プロセス)かもしれません。
しかしあなたが勇気をもってその一歩を踏み出す時、きっとその旅路は、あなた自身はもちろんのこと、あなたが出会う人々を、またあなたという存在を通してなされる保育(援助)そのものを豊かにものとしてくれるでしょう。
「援助者よ、まず自分自身を知れ」。大切にしたい言葉であり、姿勢です。
(小山 顕)